瀬谷 司

【AMED 事業】

(1) 革新的がん医療実用化研究事業、H31~R3

「サイトカイン毒性のない免疫増強アジュバントARNAXの非臨床試験へ向けて」、代表者、253,000千円、ARNAXの非臨床試験。ARNAXをがん患者に投与するには非臨床試験をパスすることが必須である。これまでにARNAXに関連した3つの国際特許(PCT/JP2011/067143 (出願日: 2011.07.27); PCT/JP2015/083825 (出願日: 2015.12.01); PCT/JP2017/027027 (出願日: 2017.07.26))を出願した。すでに最新の核酸科学により、120merを超えるARNAXの化学合成が可能になった。厳格な合成法の適正化によりnon-GMP合成が可能になった。肺がん以外のいくつかの腫瘍系で非臨床POCを取得中である。

【それ以外の研究費】

(2) 科学研究費補助金・新学術領域「発がんスパイラル」、H22~H26

「感染発がんを変調する宿主炎症応答機構」、代表者、156,000千円、がん細胞のTLR応答とDAMPの解析、TLR3特異的アゴニストARNAXの開発。TLR familyの中でTLR3のみがTICAM-1をアダプターにとり、特有なType I IFNの誘導経路とRIP3経路を活性化し、それ故に樹状細胞やがん細胞に抗がん刺激を送りうることを証明した。併せてがん細胞由来の免疫変調因子(DAMP)が腫瘍の微小環境を腫瘍進展に好都合に作り替えることを示した。

(3) 先端医療開発特区(スーパー特区)、H21

「複合がんワクチンの戦略的開発研究」、分担者、30,000千円、ペプチドワクチンとアジュバントの組み合わせ療法。当時有効性が見出せなかったペプチド ワクチンの効かない理由を証明した。アジュバントのないワクチンは効かない、という概念は現在この領域でテーゼとなっている。

(4) 厚生労働省科学研究費補助金・創薬基盤推進研究事業、H20~H22

「エフェクター選別性の抗がん免疫アジュバントの開発」、代表者、85,920千円、TLR agonist polyI:Cによる免疫活性化にMAVS経路が関与することを示し、polyI:C投与が樹状細胞の免疫増強効果以外にウイルス感染症類似の副作用(発熱・発疹・頭痛など)を呈するのは MAVS経路によることを示唆した。

(5) 科学研究費補助金・基盤研究(A)、H19~H21

「樹状細胞のウイルスパターン認識分子による細胞性免疫活性機構」、代表者、48,620千円、TLR3,TLR22のウイルスRNA認識と樹状細胞活性化。硬骨魚類に普遍的に存在する2重鎖RNA認識レセプターTLR22を同定し、その機能的特徴と、TLR3との類似点・相違点を解析した。TLR22はヒトを含む哺乳類では退化したが、その機能はヒトTLR3が代償していることを示唆した。

(6) 科学研究費補助金・特定領域研究(がん)、H14~H16

「自然免疫の活性化による抗がん免疫療法」、 代表者、6,900千円、TLR2のagonist MALP-404のがん免疫療法。マイコプラスマのリポタンパク(M161Ag, MALP-404)をTLR2リガンドとして同定し、そのがん免疫への適用を検討した。

(7) 戦略的創造研究推進事業「免疫難病・感染症等の先進医療技術」、H13~H18

「自然免疫とヒト難治性免疫疾患」、代表者、360,000千円、TLR3/TICAM-1経路の発見とそのtranslational research、がんとアレルギーを対象。主にがんのワクチン免疫療法における免疫増強アジュバントの研究と開発について種々のTLR2リガンド、TLR3リガンドの腫瘍細胞・樹状細胞応答を比較し、TLR3リガンド(MyD88を使わない)にメリットがあることを示した。

(8) 保健医療分野における基礎研究推進事業、H8~H13

「がんの免疫療法の開発に関する基礎的研究」、分担者、250,000千円、BCG-CWSを用いたNK細胞の活性化による抗がん免疫の研究。当時山村雄一教授(阪大)、東市郎教授(北大)の開発したBCG-CWSは臨床試験を経ずにがん患者さんに投与されていた。BCG-CWSの薬事承認のために必要な基礎・臨床の試験を行うために本申請を行なった。

(9) 戦略的創造研究推進事業(さきがけ研究)遺伝と変化、H6~H9

「悪性細胞を除去する免疫活性化遺伝情報」、代表者、40,000千円、がんを排除する免疫エフェクターとして自然免疫に着目、ADCC, CDCCの起動因子の研究。当時、自然免疫という概念は確立していなかったが、その存在を示唆し、それががん免疫の成立に大きい影響を及ぼすことを実験的に示した。


松本美佐子

【AMED 事業】

(1) AMED創薬総合支援事業、H27~H28

「新規がん免疫アジュバントの探索」、代表者、30,412千円、非炎症性のTLR3特異アゴニストARNAXを開発した。マウス移植がんモデルにおいて、ARNAXは全身性の炎症性サイトカイン産生を誘導することなく、がん抗原特異的CTLを誘導しがんを退縮させること、PD-L1抗体との併用で腫瘍退縮効果が増強することを明らかにした。

【それ以外の研究費】

(2) 新学術領域研究(研究課題提案型)、H21~H23

「細胞外核酸による免疫応答惹起の分子機構」、代表者、30,940千円、合成dsRNAであるpoly(I:C)がクラスリン依存的エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれること、細胞内タンパクのラフトリンが取り込みを促進することを明らかにした。

(3) 基盤研究 C、H20~H22

「パターン認識分子による細胞外核酸認識機構」、代表者、4,810千円、細胞外dsRNAは細胞表面の核酸認識レセプターを介して細胞内に取り込まれTLR3を活性化すること、dsRNAのpoly(I:C)とB/C-typeのCpG/GpC ODNの取り込みレセプターが共通であることを明らかにした。

(4) 基盤研究 C、H15~H16

「Toll-like receptor 3によるウイルスdsRNA認識機構の解析」、代表者、 4,550千円、ヒトToll-like receptor 3(TLR3)に対するモノクローナル抗体(clone TLR3.7)を作製し、TLR3がヒト骨髄系樹状細胞のエンドソームに局在することを明らかにした。TLR3は細胞内アダプター分子TICAM-1を介してIRF3,NF-kB,AP-1の転写因子を活性化し、IFN-b産生を誘導することを明らかにした。